鋳物鍋は、保温性能に優れており、食材の中まで熱が通るため、美味しさを引き出してくれる特徴があります。豊富な種類がある鍋の中でも、アルミキャスト鍋は軽さや熱の伝わり方が優れており、体力に自信のない人や加熱時間を短くしたい人に適しています。また、アルミ鍋はほかの鍋と同じくコーティング方法に種類があり、扱い方や注意点が異なるため、適切に選択するには正しい知識が必要です。今回はそんなアルミキャスト鍋の魅力や特徴について紹介します。
高性能なアルミキャスト鍋
鋳物鍋は、火で加熱すると長時間温度を保つ性質があります。鋳物とは、高温で溶かした金属を型に流し込んで作られたもので、内側の素材まで金属で作られているため、熱保持力と耐久性に優れているのが特徴です。
中でもアルミ鍋は、原材料にアルミを使うことで、ほかの鍋とは異なる特性を持っています。
具体的には、軽量・素早い加熱・手に入れやすい価格帯という3つの大きな魅力があります。
ほかの素材で作られた鍋より軽い
アルミ鍋は、従来の鋳物鍋よりも軽量に作られているため、力に自信がない人でも扱いやすくなっています。
煮物や汁物など、水分を多く扱う料理では鍋が重くなりがちですが、アルミ鍋なら不安を軽減できます。
とくに、洗浄後に鍋をひっくり返して水を切る際はその軽さが役立つでしょう。
また、出汁を取ったり、具材をザルに移したりする作業でも体への負担が少なく、効率よく作業が可能です。
盛り付けで鍋を操作する際は、片手鍋のような小型タイプを選ぶと、より一層扱いやすさを実感できるでしょう。
アルミで製造された雪平鍋は、片手で扱うことを想定したコンパクトなフォルムで、毎日使っていても疲れません。上に向かって広がっているため、容量があります。また、加熱する料理に幅広く対応しており、注ぎ口があるため、プロも愛用しています。
さらに、アルミ鍋は鉄鍋や土鍋に比べてお手入れが簡単です。中性洗剤で洗った後、しっかり乾燥させれば、長い間使用できます。
食材を素早く加熱できる
アルミ鍋は、鉄製や土鍋よりも高い熱伝導率を持っています。直火による調理と相性が良く、素材をすぐ加熱することが可能です。
鍋の壁が薄いアルミ鍋は水分の多い煮物や汁物にも適しており、焦げ付きにくいため、ジャムやソースにも向いています。
アルミで作られた雪平鍋は、温度の伝わりを強化するため、表面に凹凸が作られています。表面積が増えることで、熱が広範囲に伝わりやすくなるのです。加熱に特化しているため、蓋がありません。雪平鍋はアルミの特性を活用した鍋といえるでしょう。
実際に、調理速度を重要視する飲食店で利用されています。
家庭では、毎日鍋を使って調理する人や短時間で温かいものを楽しみたいと考える人に適した鍋です。
ただし、ステンレス製や土鍋に比べて保温力はやや劣るため、長時間あたたかさを保ちたい用途には不向きです。
また、アルミは中性以外の性質に弱いため、長時間食材を入れておくのは避けましょう。
比較的安価で手に入る・リサイクルしやすい
アルミ鍋は銅鍋よりも比較的安価に手に入ります。
業務用として工場で大量生産されてきた背景もあり、アルミ鍋は現在でも量販店で安く手に入ります。
そのため、料理の初心者が鍋を購入するのに適しているのです。すでにステンレス鍋を持っている人でも、素材の異なる調理器具をそろえたい場合に良い選択肢となるでしょう。
また、アルミ素材はリサイクルしやすい特徴があります。もし、傷んで破棄することになっても有効活用される素材のため、環境に配慮したい人にも適しているのです。
オールメタルのIHヒーターで使用できる
基本的にIHヒーターはステンレスか鉄の調理器具を想定しているため、アルミ鍋が使えない可能性があります。
しかし、オールメタルのIHヒーターならアルミ鍋を使用できます。現在使用しているIHヒーターがどんなタイプなのか確認しておくことが重要です。
もし対応していない場合は、鍋を購入する際にラベルをよく見ましょう。IH対応と書かれていれば使用できます。どこにも記述がないときは、メーカーに問い合わせれば確実です。
磁石を鍋に近づけてくっつけば、IHで使用できるといわれています。
アルミ素材の注意点
アルミ素材は、軽く丈夫で、お手入れも簡単にできる優れた調理器具です。
しかし、アルミ素材は空気に接触していると酸化して黒くなりやすいという特徴があります。
それを防止するために、鍋にはコーティングが施されているのです。
アルミ素材の鍋には、大きく分けて2つのコーティング方法があります。アルマイト加工とフッ素樹脂加工です。
アルマイト加工の特徴と注意点
アルミの表面を電気分解によって酸化させ、丈夫な被膜を形成させたものがアルマイトです。
メッキのように塗っているのではありません。
アルマイトを形成すると、硬さが増して摩耗に強くなります。表面にできた薄い膜が、中のアルミが酸素に触れることを防止し、変色を抑えるのです。被膜はサビを防止する効果もあります。さらに熱伝導率を緩やかにします。
また、硬質アルマイトという通常のアルマイトより丈夫な被膜もあります。一般のアルマイトと比べて数倍も丈夫です。
アルマイト加工の鍋を使用して調理した料理は、できるだけ早く別の容器に移してください。洗うときはぬるま湯を利用し、汚れを柔らかくして中性洗剤で洗います。
アルマイトは、アルカリ性や酸性に傾いている食材や洗剤に接触すると被膜がダメージを受けてしまうため注意が必要です。
洗った後は水気を拭き取り乾燥させてください。水分が残っていると黒ずむ原因になります。
フッ素樹脂加工の特徴と注意点
フッ素樹脂加工とは、アルミ鍋の表面にフッ素樹脂を塗り焼き付けたものです。テフロンやセミフロンといったものが有名です。
フッ素樹脂によるコーティングは加熱した料理がこびりつきにくくなったり、汚れが落ちやすくなったりしますが、器具がデリケートになるため、強火の調理に向きません。急激な加熱も避けるべきです。
また、表面をフッ素樹脂で加工されたアルミ鍋は傷つきやすくなっているため、プラスチックや木製の調理器具を使うといいでしょう。
初めて使用するときは油を鍋の底全体に敷きます。フッ素樹脂加工した表面には、とても小さな穴が開いています。
この穴に油が入り込むことにより、加熱対象の食品が滑りやすくなり、コーティングが長持ちするのです。
使用後は、鍋がまだ暖かいうちに中性洗剤で洗います。汚れがこびりついてしまった場合はお湯で柔らかくしましょう。洗い終わった後は、鍋を重ねて保存するのを避けてください。
フッ素樹脂加工を施した鍋では、強火や急激な加熱はNGです。使用するときは、必ず油を敷いて、コーティングを守りましょう。
また、アルミ鍋でよくいわれるのが、米のとぎ汁と野菜くずを煮込んだり、レモンの輪切りを活用したりする黒ずみの軽減方法です。これは表面を加工していない雪平鍋で有効な対策ですが、一般の加工に比べるとそれほど大きな効果はありません。
まとめ
アルミキャスト鍋は、ほかの鍋と比べると軽くできており、重くなりがちな鍋料理や頻繁に鍋を移動させる出汁とりや盛り付けなどで調理者の負担を軽減できるのが特徴です。お手入れも簡単で水気をしっかりと切り乾燥させれば、基本的に問題ありません。また、熱伝導率が高いため、食材を短時間で加熱できます。鍋を高い頻度で使用する家庭や時間をかけず温かいものを食べたい人に適しています。ただし、ステンレス製の鍋よりも保温する力は弱いため、温めたものを保存する目的で使用するには不向きです。アルカリ性や酸性の食材と反応して黒ずんでしまうことがあるため、扱いには注意しましょう。また、アルミキャスト鍋は、ほかの鍋よりも安く手に入る特徴があります。現在でも大量生産されているため量販店で手に入りやすいのです。料理に慣れていない人や異なる素材で作られた鍋を手に入れたい人に適した調理器具といえます。
